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28.07.2017

 中東欧の日本語教育を支えてくださっている皆様、いつもありがとうございます。 【名刺交換の日本語】  9月から新年度、あるいは新学期という教育機関も多いことと思います。新たに日本語を始める学習者を前に、教師も期待と緊張の入り交じった気分で教壇に立つことでしょう。  どのような教科書を使っていても、年齢層にも関係なく、入門期の最初に挨拶のトピックを扱う点は共通していると思います。挨拶を導入する前に延々とひらがな・カタカナだけを教え込むような授業をされている方はいるでしょうか。  「相互理解のための日本語」ということがJF日本語教育スタンダードの理念になっていますが、この相互理解を深めていくためには課題遂行能力と異文化理解能力が必要です。ただ挨拶をするだけでなく、挨拶を通じて何ができるのかを考えていくこと、そして文化の違いが挨拶に大きな影響を与えていることに意識的になることが重要です。  初対面の人との距離のとり方は、その典型的な例だと思います。ハグするのか、キスするのか、握手するのか、お辞儀をするのか……、そして、そのそれぞれの方法も文化によって微妙に異なってきたりします。多国籍の日本語クラスでこのトピックで話し合いをしたら、実に興味深い結果が出てきました。クラスでそれらを実際に試してみることで感じる違和感というものは、常に大切にしていきたいものだと思った次第です。  日本の挨拶文化のなかで欠かせないものの一つが名刺交換です。苗字や名前の種類が非常に多く、さらに最近では「キラキラネーム」と呼ばれる、ちょっと見ただけではわからない当て字の名前や、外国風の名前を無理に漢字に当てはめた名前も多くなっているため、日本人は視覚情報に頼らないと相手の名前が覚えられないという現実的な問題もあります。名刺そのものは世界各国で使われていますが、その交換の仕方に独特の作法がある点にも注意する必要があります。  名刺交換の前には名刺を作成しなければなりません。フォーマットを決めて、所属、肩書き、連絡先を入れるタスクを課すのもよいでしょう。  こうした名刺交換のやり方から、名刺作成までカバーしているのが、「WEB版 エリンが挑戦!にほんごできます。」の「やってみよう」です。  まず、「動画の再生」と「解説」で名刺交換のやり方を学び、次に「ゲーム」で名刺を実際に作るという流れになります。  ところで、名刺交換に関するCan-doを「みんなのCan-doサイト」で検索すると、JF まるごと Can-doとして、A1レベルの「名刺を見て、ローマ字や外国語などを手がかりに、名前や会社名などの基本的な情報を確認することができる。」と、B1レベルの「取引先で、名刺を交換しながら、名前、所属、業務内容など、仕事上必要な情報などについて、ある程度詳しく自己紹介し合うことができる。」の2件がヒットします。初級のA1レベルは「受容」の言語活動ですから、必要な情報を探し出せればよいのですが、中級のB1レベルになってくると「やりとり」の言語活動で自己紹介とあわせて相手の情報も聞き出さなければなりません。  異文化理解のCan-doというものはありませんが、名刺交換の活動を通じて、初級レベルから「日本文化」に触れておくことは大切なことだと思います。「エリン」は中高生向けですが、このような文化の差異は、年少者のほうが柔軟に受け入れることができるかもしれません。  『まるごと 日本のことばと文化』では、A1レベルのCan-doは、「入門(A1)」トピック2のCan-do 6に、「めいしをよみます」という形で出てきます。そして、「まるごと+」では、「かくにん」→「れんしゅう」→「チャレンジ」の順にしたがって学習できるようになっています。B1レベルのCan-doは、「初中級(A2/B1)」トピック9のCan-do 42に、「勤めている会社と自分の仕事について話す」という形で出てきます。B1レベルのほうは現時点では紙媒体のテキストだけで、「まるごと+」はまだありません。  企業等での社会人経験がないと、名刺交換の作法はよくわかりません。筆者も日本で非常勤の立場で教職に就いていたころは名刺もなく、中国へ行ってはじめて名刺を手にし、中国的な名刺交換を最初に身につけたので、このようなサイトは参考になります。ちなみに30年近く前の中国では、名前を自分のほうに向けて渡すことが多く、受け取った名刺を見つめる時間が日本よりも長いように感じたことを覚えています。現在は変わっているかもしれませんが……。みなさんの周囲ではいかがでしょうか。